【実録】サンプル請求フォームをLINE経由にしたらCVRはどう変わったか?

従来の問い合わせフォームよりも、まずはLINE追加してもらい、そこから問い合わせフォームに誘導する方が最終的なCVRは上がるのでは?

こんな考えから、LP→LINE友だち追加→LINEのアンケートフォームに誘導するという結構な改革をBtoCサービスでしたことがあります。

最近はLINEもメッセージツールとしてだけでなく情報収集で使う人も多く、企業アカウントも活性化してるし、LINE友だち追加に抵抗がある人も減っている。だから最初のハードルが下がる分、最終的なCVRも下がるはず。このような仮説を立て、大きな期待を持って当時月に数千件コンバージョンが発生していたサービスの大改革を敢行したのでした。

みんながこぞってEFOを頑張るワケ

これまでは、LPでいかに気持ちの良いフォームを作成して完了率をあげ最終的なCVRをあげるか。こればかり考えてきました。

たかが問合せフォーム、されど問合せフォーム。

一見シンプルでどれも同じに見えても奥が深いのが入力フォームです。
項目数は最適か、必須と任意は適切か、入力例は最適か、入力例の文字の色は濃すぎないか、エラーメッセージの場所や色は親切か、完了ボタンを文言は何が良いか、などなど。ちょっと挙げるだけでも、たくさんのチェックポイントがあります。

また、Mouse Flowなどのツールで実際のユーザー録画を見て研究したり(録画ツールは思わぬ発見が見つかることが多いので改善し尽くしたと思っているサイトでも定期的に画面録画を見るようにしています)、フォームファネルを分析し離脱ポイントを把握し改善したり、たかがフォームひとつでもかなり細かい点まで気を配る必要がありました。

MEMO
問い合わせフォームは、単純に項目数を減らせば良いといった簡単な話でなく、このあたりの話はまた別途書きたいと思います

そもそも問い合わせフォームまで来ている、もしくは最初の項目の入力までしている人は既にいくつものマーケティングハードルを乗り越えてきたかなりの上客なわけで、フォームの利便性で帰らせてしまうのは本当にもったいないと言えます。

このようなことで問い合わせフォームの最適化はEFOツールもたくさんリリースされていますし、マーケティングの中でもひとつの大きな最適化ポイントのひとつとなったわけです。

敢えてLINE友だち追加という低いハードルを増やす戦略

これまでのやり方は以下のような流れでした。

【従来の遷移】
広告→記事LP→遷移先LP→問合せフォーム→問合せ完了

サンプル請求など簡単な入力内容の場合だと、最近では遷移先LPに直接入力フォームを埋め込むことも多いですが、大体この流れですね。

そして今回の変更ではこれを以下のように変更することにしました。

【変更案の遷移】
広告→記事LP→遷移先LP→LINE追加→問合せフォーム→問合せ完了

マーケティングの一般論ではコンバージョンまでのハードルは少ない方が良いというのが定説です。(記事LPはこれを見事に覆したやり方ですが)これを使い慣れたLINEの友だち追加という低いハードルを敢えて増やす。次に信頼感の高いLINEからフォームに誘導されるということで最終的なCVRが改善するのではという仮説です。

仕組み構築のために準備したこと

新しいやり方への移行に際し、以下の準備をしました。

LINE公式アカウントの開設

無料プランもありますが、1ヶ月で送れるメッセージ数が1000通と制限があります。月に数千件コンバージョンが発生していて、かつ引き上げのためのステップ配信をするとなると、もちろん全然足りないので月に45000通まで配信できる月額15000円のスタンダードプランを契約しました。正直これでも全然足りずに追加料金を支払ってますが。。

https://www.linebiz.com/jp/service/line-official-account/plan/

LINE配信ツール(Lステップ)の契約と構築

今回はCVR向上の話をメインに書いていますが、実は今回のLINE移行でCVR向上以上に期待をしていたのが、サンプル請求ユーザーに対してのアプローチをメール配信からLINE配信に変えることによる引き上げ率の向上です。


もちろんLINE公式アカウントからもメッセージは送れますが、セグメント配信やスケジュール配信、流入経路分析などを考えるとどうしても物足りなくLステップを構築することにしました。


これまではサンプル請求者にはステップメールを配信していたのですが、「メールなんて誰も見ないでしょ」、と思っていて、これもLINEに全面移行。これまでのメール配信の内容は結構な長文にしており、このままLINEで配信するのは明らかにダメそうだったので、TwitterでLステップの専門家的な人に声をかけて初期構築と数ヶ月の運用代行をお願いしました。(初期費用50万円くらいとその後月5万円くらい、半年くらいで無事卒業しました)

少し話は逸れますが、わたしはマーケティングに限らず(例えば新規事業立ち上げなど)新しいことに取り組む際は、その分野の専門家複数名からお金を払って話を聞くようにしています。そして基本的にはその人たちのいう通りにやってみるようにしています。わたしの性格上「それは絶対違うでしょ」と思うことは多々ありますが、ここはグッとこらえて言う通りやってみてその運用を一通りして大体の結果を見た後に自分の考えを足していくようにしています。

今なら数万円くらいでスポットコンサルも受けられますし、専門家がずっと積み上げてきたやり方をこれくらいのお金で買えるのであれば全然安いと思っています。

今回も特にステップ配信の頻度や内容で、かなり違和感はありましたが取り敢えずその通りの内容にすることにしました。

具体的なLINE追加から問合せ完了までのフロー

LINE追加からの具体的な導線はLステップコンサルの方と一緒にいろいろ考えました。LINEでは友だち追加後にすぐにメッセージを送ることができます。なので友だち追加直後にLINEの機能であるアンケートを送って、そこで電話やメールアドレスなどの個人情報を入れてもらうやり方にしました。

一点想定外だったのが、このアンケートフォームはLINEの機能にも関わらず、UIは一般的な入力フォームの形です。LINEとの親和性を考えると、LINEのメッセージに似たチャットボット風の入力フォームが良いのではと思いましたが、LINEのアンケートフォームはそうでなく、そうすると外部のフォームを使わざるを得なく、データ連携の点でもイマイチだったのでLINEのアンケート機能を入力フォーム代わりに使うことにしました。 

チャットボット風フォームはBOTCHANやペングルのような専門ツールもありますが、今回のような定型のもの(回答内容によっては質問を変える必要がないもの)であればそれほど特別に難しいものではなく、一般的なエンジニアの方に依頼すれば簡単に安価でつくることができます。このような点でも自社チャットボット風フォームも考えましたがやめました。

その他CVRや引き上げ率向上のために工夫した点

LPに設置するLINE追加ボタンの工夫

当然ですがこのボタンはタップするとLINEが立ち上がり友だち追加画面に遷移します。これは予想していない人にとっては唐突感があり、離脱する可能性が高いのではと考えました。なので出来る限りボタンからLINEが連想できるように何度も修正をしました。具体的にはボタンの色を見慣れたLINEのアイコンの色に寄せました。またボタンの文言も「LINE友だち追加してサンプルをもらう」的な内容にしました。また、ボタンの上にはこの後の流れ(LINE追加→アンケート回答→完了)を明記しました。さらにボタンの下に「※ボタンをタップするとLINEが立ち上がります」と丁寧な説明も追記しました。

LINE起動後の友だち追加ページの最適化

これはLINEの仕様なので出来ることは限られますが、このページは何もしないと正直すごく友だち追加ボタンがわかりにくいです。これを解消するために「ボタンはここだよ」「友だち追加すると●●がもらえるよ」と丁寧に教えてあげます。マーケティングを頑張ってそうな興味のない会社のLINEを何度も追加して他社がどのようにやっているのか研究しました。

媒体ごとで分析できるようLステップの流入経路分析を使う

当たり前ですが媒体ごとでCPAも、その後の引き上げ率も変わります。もっというとユーザー属性も異なります。例えばFacebookやサーチのユーザーは確度高め、LINEやスマニューは件数はくるけど角度が低いなど様々です。流入経路で媒体ごとにURLを発行しそれぞれのLPに設定することでその後の引き上げ率も含めた効果測定はもちろん、媒体ごとでその後のステップ配信を出し分けるのとも可能になります。

ようやく変更完了。その後に起こったこと

このような準備を1か月くらいしたと思います。「CPAはどれだけ下がるのかな」今回の変更は例えばFVの変更などよりも大幅に影響が大きいと変更でいわばハイリスク・ハイリターン。期待と不安が乱立していました。まずはFacebook、LINE、YDA、GDNなどのディスプレイ関連の広告を一気に変更しました。特にLINE広告はそもそもLINEを開いてるわけだし親和性はかなり高いと考えられ特に期待していました。

管理画面を見ます。全体的にコンバージョンが1.5倍から2倍近く増えている印象。
施策でCVRが倍近くまで改善したものは、15年やってきた中でもそうありません。

「当たった」

そう思ってLステップで登録者を調べると明らかに管理画面CVとの乖離があります。もちろん悪い意味で。

ポイントはCV発生ポイントです。LINE友だち追加はLINE立ち上げ→友だち追加ボタンを押すという2段階が必要です。友だち追加ボタンはLINEのアプリ内の動作なので、そこにコンバージョンタグを入れられるわけもなく、コンバージョンポイントはLP内の追加ボタンタップにするしかありません。

コンバージョンタグはバッチリここで発火しますが、その後LINEアプリが開いただけで友だち追加せずに離脱するユーザーが思ったよりも多いことがわかりました。実は話が前後してしまいましたが、さきほど紹介したアプリ内のLINE友だち追加ページの最適化もこれを少しでも改善するための施策だったのです。

さらには、友だち追加までいっても次に送られてくるアンケートフォームに入力しないユーザーも一定割合います。(これまでの実績で10%程度はここで脱落します)

【サンプリ請求までの遷移】
LINE起動→友だち追加→アンケート回答(CV)
※↑ここでCV発火

その後1年以上経ちましたが、結局すべて加味した実CPAは旧バージョンとほぼ同じという悲しい結果になりました。その間に何もしなかったわけではありません。例えば、20代まではLINE経由の方がCVRが高く、30代以降はLINEへの抵抗が高く従来バージョンの方が良いのでは、と仮説をたて年齢でセグメントを切ってテストしてみたり、最後の入力フォームをLINEに似せたチャットボットにしたり、なんとかLINEの方が良くなる状況を作り出そうと頑張りましたが、何をやっても本当にびっくりするくらい同数という結果になりました。ちなみに圧倒的なプラットフォームアドバンテージを持つLAPでも同じでした。
※当サービスは10代は対象でないので、もしかすると10代だとこのやり方の方が良いかもしれません

おわりに

結果の前段階の話が長くなってしまいましたが、今のところの結論はコンバージョンをLINE友だち追加経由にしてもCVRはびっくりするくらい同じという結果になりました。


今回はCVRに重きを置いた話にしましたが、同じかそれ以上に期待していたその後の引き上げ率の話についてはまた別の記事にしたいと思います。この話はわたしの体験談なので、致命的なミスや抜けがあるかもしれません。そのようなことを見つけられた方はそっと教えて頂けると嬉しいです。